個人間の売買と登記

仲介業者を介さずに行う個人間の不動産取引の注意点

  

 トップページへ

不動産Q&Aへ戻る

隣人、親戚、親しい友人同士などの間柄で、売却物件、さらに売買代金まで決まっているケースがあります。

当事務所は、不動産売買契約の確認・契約書の作成・契約締結の立会、売買代金決済の立会、所有権移転登記まで、ご相談、法的サポートをお受けします。

ここでは、基本的な注意点を説明します。

 

第1 契約締結前の調査事項
第2 手付について
第3 契約書の注意事項
第4 契約の履行準備
第5 契約の債務不履行
第6 所有権移転・代金決済時の注意事項


第1 契約締結前の調査

 

1 物理的状況を調べる

土地の物理的状況

建物の建築を目的に土地を購入する場合、建築確認許可が得られるかどうかを確認する必要があります。建築指導課などで、事前に確認します。

道路に接していないと建築の許可が得られません。公道へのに接道は、地図・現地を確認した上、建築指導課等で確認します。さらに、生活に必要な設備(電気・水道)の有無を現地確認します。

登記簿上の面積が実際と異なる場合があります。

正確な面積を求めるためには、土地の形状・面積・境界を地図・公図・測量図などを参考に現地を確認し、必要に応じて実測測量を行います。測量や図面作成は、測量士や土地家屋調査士に依頼します。地盤の耐力に不安があるときは、専門業者に調査を依頼します。

更地だと思っていたら、現地では建物が建っていた。駐車場に使用されている。境界が解らない。などなど現地に行ってはじめて解ることがいろいろあります。

見に行った土地が、登記簿上の土地なのかを確認するめには、登記簿、公図、17条地図、住宅地図など、可能な限り特定の資料を整えて行うべきです。 

 

建物の物理的状況
面積は、建築確認通知書・建物図面と照合します。劣化・破損・欠損の有無は、現場を確認して行います。建物についても占有状況を確認する必要があります。

 

環境について
隣に大きなビル・境界がわかりにくい・電気も水道も通っていない・道路がない・崖の傍・湿地帯など、登記簿にない建物が建っているなど、現地へ行かなければわからない問題点がたくさんあります。 また、第三者による占有がないかどうか現状確認をします。駐車場にするのか、宅地として利用するのか、その利用目的により、備えるべき客観的条件も違ってきます。

 

2 権利状況を調べる
誰が登記上の所有者なのか、土地建物に第三者の権利が付いているかいないか、賃借権・地上権・用役権・担保権などの有無について、最新の登記事項を調査します。不動産の権利を制限する権利は、原則として登記していなければ第三者に対抗できません。
注意すべきは、借地借家法により、建物の利用を目的とする借地権は、登記がなくても土地の上に土地賃借人が所有する登記された建物があれば第三者に対抗できます。また、建物の賃借権も、引き渡しがあれば登記しなくても対抗されます。こうした登記されていなくても対抗される権利の有無を確認するために、現地調査を欠かすことはできません。

 

3 不動産の特定
 「この土地の東側50坪」という具合に、登記簿と実際に売却する必要があります。これが一致しない場合には、測量し、杭打、図面作成、分筆登記をする必要があります。

 

4 法令上の制限事項を調べる
いわゆる接道問題、土地が公道に繋がっているか。土地や建物の利用を制限する法律がないか、都市計画法による建築制限や建築基準法による建築制限など、市区町村の都市計画課・建築指導課などで調査します。

 

5 権利移動に関する制限の有無を調べる
 たとえば、地目が田や畑など農地であれば、権利の移動について農地法上の許可や届出が必要になります。
   
6 課税関係を調べる
一般に売主には不動産譲渡税、買主には取得税、登記の際の登録免許税がかかります。また、固定資産税については、所有権移転の際に、年額に所有者の利用日数に応じ按分清算するのが慣習です。

 

7 誰が所有者か? 登記名義人と所有者の関係
登記上に、所有者Aと記載されているのであれば、Aが所有者であると事実上推定されます。しかし、Aがほんとうに所有者であるという法的な保証はありません。

たとえば、Aが前所有者のBから権利を取得した原因が無効であれば、Aは所有者にはなれません。また、すでにAはXに売却しているのに登記をしていないという場合、所有者はになります。 これでは、不安で登記を信頼することはできません。

そこで、ほんとうに所有者が長い間、他人の名義で登記されていることを知りながら、これを放置しているなどの事情がある場合には、他人の名義の登記を信じた第三者を保護するとする判例があります。

しかし、慎重に取引をする場合には、に売買の事実を確認するなど、過去20年間以上遡って権利関係を調査する必要があります。

なお、所有者Aが死亡している場合にはその相続人が所有者です。相続人への相続登記をしなければ、売買などの移転登記をすることはできません。

 

8 権利主体の同一性
登記上、所有者Aと記載されているとして、Aであると自ら名乗る方が登記上のAであるかどうか、という問題があります。登記取引の際には、最低、免許証等により本人かどうかを確認します。ただし、免許証が偽造される可能性もあります。司法書士は、ほんとうにAであるかどうか、様々なかたちで確認作業を行います。

 

9 権利主体の契約の能力
に契約締結の障害となるような契約をする能力について制限はないか?つまり、未成年者や被成年後見人ではないかを調べる必要があります。こうした能力に制限のある方の場合には、その法定代理人、すなわち親権者や後見人との間で契約しなければなりません。法定代理人が誰であるかは、親権者については戸籍、成年後見については成年後見登記事項証明書を確認します。
また、意識不明の状態で、Aが「売る・買う」という意味すら分からないほどの状態、すなわち意思能力がない状態においては、後見人を選任しない限り、契約することはできません。

 

10 契約締結の任意代理権
AがBにAの所有する不動産の売却の権限を委任することができます。しかし、ほんとうに代理権があるかどうかの確認は慎重にしなければなりません。たとえば、Bが、Aの実印を押印した委任状と印鑑証明書とを持参したとします。しかし、委任状が偽造されている可能性、つまりAから実印や印鑑証明書を悪用された可能性もあります。

結局、よほど信頼関係がある者同士でないかぎり、委任状や会話だけで信用して契約したり手付を納めたり、代金の支払いをしてしまうと、大きなリスクを伴うことになります。最低でも一度は、本人Aと面談し、代理権を与えたかどうかを確認すべきです。

 

第2 手付について
不動産の売買契約などでは、契約締結の際に、買主から売主に対し、一定額の金銭を交付することがあります。これを手付と呼びます。
手付には、次のような法的な意味があります。 どの内容の手付であるか、話し合いで定め、契約書に明記する必要があります。

手付のない売買契約を結び、所有権移転と同時に一括決済することも可能です。素人同士の場合は、できれば手付けを利用せず、登記・物件の引き渡し・代金の支払いを同時に行う同時決済を検討します。 

 

1 証約手付
代金総額の一部を売主に交付する手付で、金銭の授受により、契約の成立を確かにするための手付です。

2 違約手付
相手方に債務不履行(契約違反)があったときには、被害を受けた側が、手付金を没収できるとするものです。違約手付により没収された金額とは別に、損害賠償を請求できるとすることもできます。

3 解約手付
契約を締結すると、売買当事者は、信頼関係に入り、原則として理由もなく一方的に契約を解除することはできません。しかし、手付けを解約手付として定めておけば、相手方が履行に着手する前であれば、買主は、渡したお金を放棄し、売主は、受け取った金銭等の倍額を返還すれば売買契約を解除できるとする趣旨の手付です。

4 手付金詐欺に注意!
詐欺には、いろいろな方法があります。不動産売買においてもっとも危険なのは、いわゆる手付詐欺かもしれません。手付は、売買契約締結の段階で交付されますが、契約締結の段階では仲介人や司法書士など第三者が関与しないことも想定されます。また、実際に登記を移転する場合ほど厳格な確認も行われない可能性があります。不動産の調査や、権利の調査が不十分だと、あたかも他人が所有者であるかのように装い、また大きな問題があるのに隠蔽されて、手付金をだまし取られるリスクにご注意下さい。できれば、信用できる仲介人が撞いていない場合などには、契約締結や手付の段階から、司法書士にほんいん確認などの調査を依頼することをお勧めします。 

 

5 手付金と所有権移転仮登記
上記のように、手付金を支払うと、万が一所有権を取得できなかったとき、大きな損害を被ります。また、騙される危険もあります。そこで、こうした場合には所有権移転仮登記と呼ぶ登記をしておくことがあります。
仮登記とは、まだ所有権は移転していないが、最終的に所有権を移転した場合には、仮登記に遅れた登記に優先して権利を確保するための制度です。
それと同時に、仮登記をするために、司法書士など第三者が介在しますから、司法書士による本人確認や、登記に必要な書類のチェックなど、リスクを減らすことができます。
仮登記のための登記費用や司法書士への報酬が必要になりますが、仮登記でで収めた登録免許税は、売買による本登記をする際の登録免許税に充てますから、通常の売買登記以上の登録免許税を支払う必要はありません。

 
第3 契約書に関わる注意事項

以上の調査によりなんらかの問題を発見した場合、できれば、すべての問題を解決してから契約を行うべきです。しかし、あえて問題が解決されることを前提として契約を結ぶこともあります。その場合には、問題が解決しない場合を想定し、一定の条件により一方的に解約することができるとする解約事項、それまでの負担を精算する精算条項を定めておくとよいでしょう。  

 

1 売買契約書に記載すべき基本事項
当事者の表示・不動産の特定表示・売買価格・条件・期限・制限物権等の抹消・手付・所有権移転・占有移転・移転登記・瑕疵担保責任・代金支払方法・危険負担解除・精算・各種費用の負担・特約条項

2 売主の瑕疵担保責任について
ここでは、瑕疵担保責任について、簡単に説明をしておきます。
瑕疵担保責任とは、売買契約により購入した物に、所有権の移転の時点では分からなかった瑕疵(簡単には分からない欠陥やきず)があった場合に、売主が買主に対して負う責任を意味します。
土地であれば。産業廃棄物が埋められていたとか、地盤が緩くて建物の建築に影響があった、といった例が瑕疵にあたります。建物だと、白蟻や、雨漏りなどが痕から発見される場合です。
こうした場合、買主は、売主に対し、これによって生じた損害の賠償請求することができ、そもそも契約の目的を達成できないような大きな瑕疵があった場合には契約を解除することができます。(民法570条・566条1項)
瑕疵担保責任の行使期間を契約に定めない場合、原則として、物の引き渡しの日から10年間、かつ欠陥を知ったときから1年以内に行使できます。
たとえば、中古住宅の場合で、建築年数が相当経過している場合には、あまりに長期の責任を定めると、売主としては負担が重くなりすぎると感じることもあります。実際にも、責任を免除する契約の例もあります。売主が事業者であったり宅地建物取引業者である場合などには、最低2年以上、瑕疵を発見してから1年以内とされていますので、これらを参考にしながら、売買当事者の間で決める必要があります。

3 契約書への署名
少なくとも、契約書への署名は、お互いに自筆で行いましょう。後で、こんな契約書は、見たこともないし署名もしていないと言われ紛争になるのでは契約書を交わした意味がありません。司法書士などの第三者に立会を頼み、立会人として署名をした貰うと、契約書としての証拠能力を高める効果があります。 

4 貼付印紙
税金の申告の際に契約書が必要になります。契約書の印紙貼付を忘れないようにしてください。貼っていないと貼付額の4倍の金額を徴収されます 。  

5 契約書の保管
購入した不動産を将来売るときには、今回の売買代金が取得価格となり、売却価格との差額となる利益部分に不動産譲渡税が課税されます。しかし、売買契約書を紛失し購入価格が証明できないと、売却価格すべてが利益とみなされ課税対象となる可能性があります。慎重に保管しましょう。 

 

第4 契約の履行準備
契約を締結してから、実際に売買代金を支払い、所有権を移転する、いわゆる代金決済取引の日まで、契約当事者はお互いの信頼関係を維持しながら、契約の目的達成へ向けて協力しなければなりません。つまり、売主は、買主に対し、問題のない完全な所有権を渡すことができるように、土地を分筆したり、他人に貸している場合には契約を解除したうえ、実際に立ち退かせ、担保権付の債務を弁済して担保を抹消できるようにしたりします。買主としては、取引の日までに売買代金を確実に準備できるように、ローンの申し込みをしたりします。
予定外の問題が発生した場合には、すみやかに情報を交換し、誠意を持ってお互いに解決する姿勢が大切です。

   

第5 契約の債務不履行
契約が履行できなくなる理由としては、契約の相手方の故意や怠慢による場合と、当事者には責任のない天災と言った不可抗力や第三者による妨害による場合があります。契約書にこのような状況に至った場合の対応について、解約条項や解除条項が定めてあれば、それに従って契約を解除したり、変更契約を結ぶなどして対処します。契約書に定めていない場合には、法律に従って処理します。
このような事態に陥った場合には、当事者で話し合うことも重要ですが、紛争が必要以上に混乱しないように、専門家に相談をしてその対応を図ることも検討されるべきでしょう。

   

第6 所有権移転・代金決済時の注意事項
いよいよ取引の日になりました。代金決済と所有権移転登記を引き替えに同時に行われることが通例です。多くの場合、司法書士が取引に立会います。

司法書士は、なるべく取引直前の登記の状態を確認します。そもそも、登記ができない状態になっている可能性があるからです。現在、登記簿上に残っている売主側の担保の抹消登記、所有権移転登記、買主の購入資金の担保設定登記など、複数の登記を処理するために必要な書類を最終確認し、登記ができる状態にあることを確認します。登記が一つでもできないと、売買の登記ができなくなろからです。
また、司法書士は、所有権移転登記の当事者について面識がない場合には、本人確認を行います。この本人確認は、犯罪収益移転防止法により義務付けられていると同時に、当事者の権利を確保するために必要です。具体的には、自動車運転免許証やパスポート、住民基本台帳登録カードのなど写真入りの証明書の提示などを求めます。
司法書士は、代金決済という契約の最終段階で、公平な第三者として契約当事者の本人確認を行い、万が一の事故を防ぐ努力をします。

 

司法書士佐藤直路 079−289−0540

 トップページへ

不動産Q&Aへ戻る